北の道21 Soto de Luina − Cadabedo


6月6日(月) 夜中に起きてしまったので、このまま寝られないとスタミナ不足になってしまうからと0時7分に睡眠導入剤を飲んだら8時までばっちり寝られた。この旅で生まれて初めて睡眠導入剤なるものを飲んだので、効き方も半端でないらしい。もらった錠剤を3分の1しか持ってこなかったので、こんなに効くんなら全部持ってくりゃ良かった。8時50に出発する。

 今日はずっと上り下りを一日中やっている気分だ。なので撮った写真はこんなんばっかり。山の中から一時海が見えるところに出るが、また山の中へ。それをまた繰り返すのでシャクだ。だから上り下りばっかなんだよな。ずーっと上りっぱなしの方が下りがないのでいいような気がしてきた。苦労して登って来た貯金を不本意ながら下りで下している気分。ひどいところは次の写真のように正真正銘の獣道らしき道まであるので、これ本当に巡礼路かと不安になりそうだ。

 本日のゴールが近くなってきた急な下り坂で、馴染みになったおばちゃんが座り込んでいる。どうしたんだろうと話しかけてみたら、下り坂ですっころんだ拍子に手を打撲したらしい。ハンカチを巻いた腕を見せて痛そうな顔をしているので、どうしたもんかのうと思うが、大丈夫だと言うので気がかりながらもおばちゃんを残して先を進む。でも、そこから15分歩いたら里に出て農家もあったので、そう心配することでもなかったかも知れないが、おばちゃんを置き去りにしてきたので、後からボルタレンを持っていることに気づき、ボルタレンを塗って上げたら良かったんじゃとか、ボトルの水だけでも上げたら良かったんじゃなかったのかとか、年老いて怪我したおばちゃんを置き去りにして自分だけその場から逃げてしまった気分にさいなまれてしまう。

 Cadabedoの村に到達してから私営のアルベルゲが見つからず、何度もタブレットを出して確認することになる。やっと2時半になって見つけられるが、宿の扉は開くのにオーナーは出てこない。こういう場合に良くあるチェックイン前にベッドを確保していいパターンなのかな?
 20分ほどしたら手首を負傷したおばちゃんも到着してきたので肩に乗っていた重石が取れた気がした。ボルタレンを見せたら嬉しそうにしているので、ボルタレンを知っているようだ。シャワーの後に使わせて貰うと言っている。怪我したおばちゃんを山の中に置いてきてしまった後ろめたさがあったので、ボルタレンのお陰でちょっとは罪の意識が薄くなった気がした。

 その後、カタリナとサンダルおばちゃんも到着する。サンダルおばちゃんはいつもサンダルで歩いているので、最初見たときは本物のペリグリノと思わなくて、だって素足にサンダル履きだから。でも、巡礼路で幾日も会うのでやっと本物の巡礼者だと言うのがわかった。それが分かると、素足にサンダルだしバックパックも私達みたいに腰で背負える本格的登山用と違って肩の負担が大きいザックを背負っているし、その他にも小型のショルダーを小脇に抱えて鈍ーい歩みで長い時間を歩いている。この人こそ本物のペリグリノだと言う気がしてきた。手を負傷したおばちゃんや一緒に到着したカタリナも女性のソロでみんな山坂越えて長い距離を頑張って歩いている。女性は男の私たちとは体力は元より、一人で淋しい山道を歩いたり精神的にも大変な苦労があるだろう、そう思うとみんな涙もので尊敬に値する。

 このアルベルゲは私営だけど10ユーロで簡単な朝食も提供されるらしい。金儲けでなく巡礼者のために開設したアルベルゲというのが伝わってきたので尊敬の念を込めてホスピタレラに和風マリアカードを進呈する。これをあげたからと言って何もないのだが、私個人の気持ちとして。

 小さな村だがスーパーで買い物ができた。1リットルビールもあったが冷えてないので冷えた缶ビール×3と串刺しピクルス瓶詰め、8Pチーズ(スペインは6Pじゃなくて8P)、明日用に1リットルジュース。生ハム、ヨーグルト4、やっと買えた固形石鹸で締めて7.01ユーロ。結構な買い物したけど今日はバルに寄ってないので出費はたいしたことない。一日の目標額20ユーロ以内だ。フェイスブックに接続したら日本は夜中の1時過ぎだけど、友達のいっちゃんがログインしていたのでネットの電話で少しお喋りできる。

 カタリナが充電用USBの口が会わないので貸してと言ってくる。はいはいそんなのお安い御用ですよ。Wi-Fiが繋がっているうちに今後のアルベルゲ情報と歩く距離をマップに書き込んでおく。これ大事。


北の道22へつづく